害獣とは何か
「害獣」とは、人間の生活に悪影響を与える野生動物を指す言葉であり、主に都市部や住宅街、飲食店やオフィスなどに侵入し、建物や健康、財産へ被害を及ぼす動物を広く含みます。特に近年では都市部への野生動物の進出が進み、これまで山間部でしか見られなかったハクビシンやアライグマ、コウモリなどが一般家庭に現れることも珍しくありません。これらの動物は、見た目は小さくても非常に高い繁殖力と侵入能力を持っており、放置すれば被害は急速に拡大します。
代表的な害獣としては以下のようなものがあります。
害獣の種類
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特徴
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主な被害
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ネズミ
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夜行性、壁や天井裏を移動、鋭い歯で何でもかじる
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電気配線をかじる、食べ物の盗食、感染症の媒介
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ハクビシン
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雑食性、フンを一箇所にためる習性、屋根裏に好んで住む
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フン尿による悪臭、騒音、屋根裏の断熱材破壊
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アライグマ
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手先が器用、戸締まりの甘い家に侵入
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ゴミ荒らし、農作物被害、爪や歯による破壊
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コウモリ
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超音波を使って飛ぶ、屋根裏にコロニーを作ることも
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糞害(ヒストプラズマ症の原因)、鳴き声や羽音による不快感
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これらの害獣はただの「迷惑」では済まされないほどの健康リスクや建物へのダメージをもたらします。とくにネズミは、口にした食材や調理器具に病原菌を付着させ、食中毒やサルモネラ感染の原因にもなります。さらに、夜中に天井裏から聞こえる足音や物音は、住人に精神的なストレスを与えることもあります。
また、害獣は単体で行動することが少なく、複数で住み着いたり、1匹が住みつけば他の害獣を引き寄せる「フェロモン」や「糞尿の臭い」による二次被害も珍しくありません。したがって、早期に発見・駆除することが非常に重要です。
家庭・店舗・ビルにおける被害の実例
住宅や店舗、賃貸マンション、ビルなどにおける害獣の被害は、単なる不快感にとどまらず、経済的損失や衛生面での深刻な影響を伴います。実際にあった被害事例を見てみると、その深刻さがよくわかります。
ある一般家庭では、天井裏にネズミが住み着いていたことで、夜間の騒音や糞尿の悪臭に悩まされていました。調査の結果、ネズミが断熱材をかじって巣を作っており、さらに電気配線の一部を噛み切っていたことで、ブレーカーが頻繁に落ちる事態にまで発展しました。
また、飲食店ではハクビシンが厨房の換気口から侵入し、フライヤー周辺に足跡が残っていたというケースがあります。これは食品衛生法違反となる可能性があり、保健所の立ち入り検査で営業停止に追い込まれた事例もあります。店舗経営者にとって、衛生環境の維持は死活問題であることから、害獣被害はそのまま経済的な打撃に直結します。
さらに、アライグマに関する被害では、ベランダの手すりを伝って室内に入り、食べ物を荒らされるだけでなく、家具に引っ掻き傷を残されたという例もあります。このような行動は家具や建材の破損だけでなく、家屋の資産価値そのものを下げるリスクにもつながります。
特に最近では、害獣の活動時間帯が深夜帯であることが多く、住人の睡眠を妨げる「音のストレス」や「不安感」が長期的な精神的ダメージとなって蓄積されていく点も見逃せません。
こうした被害は、侵入経路の把握と封鎖、徹底した清掃・消毒、専門業者による駆除を通じてしか根本的な解決が難しいのが現実です。市販の忌避スプレーやハッカ油などを使っても、一時しのぎにしかならないことも多いため、安易な対策では再発リスクを完全に排除するのは困難です。
感染症や建物破損、火災リスクの解説
害獣による最も深刻なリスクのひとつが、「人間の健康への被害」です。厚生労働省が発表している資料によると、ネズミはレプトスピラ症、サルモネラ菌、ハンタウイルスなど、複数の人獣共通感染症を媒介することが確認されています。これらの病気は、害獣の糞や尿、あるいはそれらに汚染された食品や水を通じて人間に感染する恐れがあります。
例えば、レプトスピラ症は発熱、筋肉痛、頭痛などを引き起こし、重篤な場合は腎不全や出血傾向を伴うこともある恐ろしい感染症です。また、コウモリの糞が乾燥して空気中に舞い上がると、それを吸い込んだ人がヒストプラズマ症にかかるリスクも指摘されています。これはアメリカでは一般的な病気として知られており、日本でも注意喚起が始まっています。
建物への被害も極めて深刻です。ネズミは成長し続ける歯を削るために、固いものをかじる習性があります。その結果、家の中の配線やガスホース、インターネットケーブルなどが噛み切られ、火災やガス漏れ、通信障害の原因になることがあります。実際に東京都内では、ネズミが配電盤をかじったことが原因で小規模な火災が発生したという報告もあります。
以下は、害獣によって引き起こされる主なリスクの一覧です。
リスクの種類
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詳細説明
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感染症の媒介
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レプトスピラ症、サルモネラ症、ヒストプラズマ症など
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建物損壊
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配線・木材・断熱材の破損、屋根裏の穴、断熱効果の低下
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火災リスク
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電気コードのショートによる火災、ガス漏れによる爆発の可能性
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精神的ストレス
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騒音・異臭・不安感による睡眠障害、生活の質(QOL)の低下
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