人間に聞こえる?コウモリの鳴き声の周波数と音の正体
コウモリは夜行性の哺乳類であり、活動時に「超音波」と呼ばれる高周波の音を発しています。これは主に反響定位という能力に用いられ、空間認識やエサとなる昆虫の捕捉に欠かせないものです。反響定位に用いられる超音波の周波数は、おおむね20kHzから100kHzに及びますが、これは人間の可聴域(約20Hz~20kHz)を超えているため、通常は人間の耳には聞こえません。
しかし、すべてのコウモリが完全に無音であるわけではなく、一部の種や特定の行動時(警戒・繁殖など)には、可聴域に入る「キーキー」や「チチチ」といった音を発することがあります。特に日本の都市部で多く見られるアブラコウモリやオヒキコウモリなどは、天井裏や家屋の隙間に棲みつくケースが多く、その際に「鳴き声」として感じ取られることがあります。
また、近年ではスマートフォンの高感度マイクやペット用録音機器などの発達により、人間の耳では直接聞き取れない超音波も視覚化・録音できるようになり、「本当に音を出しているのか?」という疑問が、より具体的に検証されるようになっています。コウモリの鳴き声は「聞こえる音」ではなく、「存在に気づくきっかけ」として非常に重要です。
以下は、可聴域の音と人間が聞き取れない超音波の違いを整理した表です。
音の種類
|
周波数帯域
|
人間に聞こえるか
|
主な用途
|
可聴音(キーキー等)
|
2kHz〜15kHz
|
○
|
警戒音、繁殖期の呼びかけなど
|
超音波
|
20kHz〜100kHz
|
×
|
エコーロケーション、飛行制御
|
人間にとって聞こえにくい音であっても、それが害獣侵入のサインであることを理解しておくことは、被害を未然に防ぐ上で非常に重要です。特に深夜や静かな環境下で「なんとなく気配を感じる」「微かにキュルキュル音がする」といった体験は、コウモリの存在を察知する大切なヒントになる可能性があります。
「キーキー」「 チチチ」「 キュルキュル」・・・聞こえる鳴き声の実例と音源比較
実際に家屋の中や外から聞こえるコウモリの鳴き声には、いくつかの特徴的なパターンがあります。主に「キーキー」「チチチチ」「キュルキュル」といった、やや甲高く連続的な音が多く、これらは繁殖期や警戒時、あるいは仲間とのコミュニケーション中に発せられることが知られています。
音源や状況によっては「ネズミかと思った」という誤認も多くありますが、ネズミの鳴き声が「ギーギー」「キュッキュッ」と断続的なのに対し、コウモリはやや連続性のある甲高い声を特徴とします。以下は、実際に報告されている音の傾向を整理した比較表です。
鳴き声の表現
|
状況
|
推定される種
|
キーキー
|
飛行中・警戒中
|
アブラコウモリ、オヒキコウモリ
|
チチチチッ
|
仲間への呼びかけ・ねぐら内の交流
|
アブラコウモリ
|
キュルキュル
|
巣内での繁殖期・子育て中の親子のやり取り
|
オヒキコウモリ
|
このような音を実際に確認したい場合、YouTubeなどで「コウモリ 鳴き声 音源」や「bat echolocation sound」といったキーワードで検索することで、録音された実例を聞くことが可能です。特に、超音波を可聴域に変換するデバイス(バットディテクター)を用いた音源は、研究機関や大学でも活用されており、信頼性のある参考資料になります。
実際の家庭内被害の報告でも、「深夜、壁の奥からキュルキュルという音が繰り返し聞こえる」「天井裏でキーキーという鳴き声が断続的に響いてくる」などの証言が多く、これがコウモリによるものである可能性が高いと診断されるケースが増加しています。
重要なのは、鳴き声が「はっきり聞こえる」ことそのものが、すでに家屋への侵入や繁殖を始めているサインである可能性があるという点です。放置せず、早期に確認・対処することが望ましいとされています。