健康被害・感染症の恐怖(糞尿・ダニ・ウイルス)
コウモリの巣が家の中に存在する最大のリスクは、見えないところで進行する健康被害です。
もっとも代表的なものが、空気中に浮遊する糞尿の微粒子による感染症です。乾燥したコウモリの糞が粉末状になり、空気中に舞うことで呼吸器を通して体内に侵入します。日本でも報告されている主な疾患としては以下が挙げられます。
ヒストプラズマ症
- 主な感染源:糞からの真菌胞子
- 症状例:咳、発熱、胸痛、肺炎
- 備考:高齢者や持病のある人は重症化のリスクが高い
クリプトコッカス症
- 主な感染源:糞に含まれるカビ菌
- 症状例:頭痛、発熱、意識障害(重篤な場合)
- 備考:脳や中枢神経を侵す可能性がある
アレルギー性気管支炎
- 主な感染源:ダニやフンの微粒子
- 症状例:咳、鼻水、喘息様の症状
- 備考:小児や高齢者は特に注意が必要
また、コウモリの体表や巣に寄生する「トコジラミ」や「コナダニ」なども重大な問題です。これらのダニ類は、コウモリが巣を放棄した後も建物内に残留し、住人に皮膚疾患やアレルギー反応を引き起こすことがあります。痒みや湿疹に悩まされ、皮膚科を受診するケースも多く、長期化する被害が続くことも少なくありません。
さらに、コウモリが保有するウイルスにも警戒が必要です。コウモリは世界的に「高病原性ウイルスの自然宿主」とされており、SARS、MERS、ニパウイルス、エボラウイルスなどの起源と考えられています。
家屋への被害(天井・壁・配線などに起こる劣化)
コウモリの巣が存在することで、建物構造そのものに多大なダメージを与えることも深刻な問題です。
まず被害が顕著に出るのが「天井裏」と「壁内部」です。断熱材や木材にコウモリのフンや尿が染み込むことで、素材が腐敗し、雨漏りの原因や建材の崩壊につながることがあります。特に尿によるアンモニア腐食は建築素材への影響が大きく、長期間放置するとリフォームを余儀なくされるケースもあります。
天井裏
- 内容:フンと尿が断熱材に染み込み腐敗
- 二次被害の例:雨漏り、カビの発生、天井の落下
壁内
- 内容:木材や断熱材の腐食、悪臭の充満
- 二次被害の例:室内への臭気拡散、結露の悪化
換気ダクト・配管
- 内容:巣やフンで詰まりが発生、空調システムに負担をかける
- 二次被害の例:空調効率の低下、電気代増加
配線・電気系統
- 内容:コウモリが齧ったり、湿気でショートするリスク
- 二次被害の例:漏電、火災リスク、電気設備の故障
また、コウモリは配線の上を移動したり、暖かい場所を好むため、ブレーカーボックスや電気設備の周辺に巣を作るケースもあります。この場合、電線を齧ってショートさせたり、糞尿が電気回路に接触して漏電を引き起こす危険性があります
家の目に見えない部分に被害が集中するため、発見が遅れると修繕コストが跳ね上がるという特徴があります。築年数が経った家や木造住宅では特に注意が必要であり、点検と早期駆除が被害拡大を防ぐのに重要です。
法律違反・駆除トラブルの可能性とは?
コウモリの巣を勝手に撤去したり、追い払ったりする行為が、実は法律違反に該当する可能性があることをご存じでしょうか。日本国内で見られるアブラコウモリ(イエコウモリ)は「鳥獣保護管理法」により保護対象とされており、無許可での捕獲や駆除は違法行為と見なされるケースがあります。
以下に、法律リスクとトラブル事例をまとめます。
鳥獣保護管理法
- 詳細:捕獲、殺処分、営巣妨害は禁止されており、実施には許可が必要
許可を得ずに駆除した場合
- 詳細:1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性がある
繁殖期の駆除
- 詳細:子育て中の個体を駆除する行為は、倫理的にも法的にも大きな問題となる
自力駆除によるトラブル
- 詳細:法律違反に加え、再発や健康被害、近隣住民とのトラブルが発生しやすい
無許可業者による違法施工
- 詳細:不適切な作業による消費者トラブルや行政指導の対象となるリスクがある
合法かつ安全にコウモリの巣を撤去するには、自治体に相談するか、鳥獣保護管理法に対応した「専門業者」に依頼することが唯一の選択肢となります。プロ業者は法令遵守の手続きに則った対応を行い、駆除後の封鎖・清掃・消毒まで一貫して対応するため、リスクなく安心して任せられるのです。