副業と報奨金制度の両立(公務員ハンターの収入と制約を解説)
全国の自治体では、深刻化する鳥獣被害への対策として「公務員ハンター」の配置が進んでいます。公務員でありながら猟師として活動する場合、給与だけでなく副業や報奨金による収入との関係性が注目されており、制度上の制約や条件を理解することが重要です。
まず、公務員が猟師として副業を行う場合、原則として「地方公務員法」に基づく副業禁止規定が適用されます。ただし近年、社会貢献性や地域貢献の観点から、猟師活動が「公益的副業」として一部容認されるケースが増加しています。自治体ごとの副業承認制度に則って申請・承認を受ける必要があり、審査は職務との関連性や勤務時間外での活動範囲、利益相反の有無などを基準に判断されます。
副業としての猟師活動が認められた場合でも、金銭報酬の受け取りには注意が必要です。有害鳥獣の捕獲に対して支払われる「報奨金」は副業収入に該当し、実質的な収入増加の手段となります。捕獲頭数に応じて数千円から数万円の単価が設定されており、地域や動物の種類によって異なります。たとえば、イノシシで5000円〜1万5000円、クマの場合は1頭あたり最大5万円を超えるケースも存在します。
以下に、代表的な報奨金制度の支給例をまとめます。
自治体名 |
主な対象動物 |
補足情報 |
福知山市 |
イノシシ・シカ |
年度上限あり、事前登録制 |
愛知県某市 |
クマ・アライグマ |
クマは事前通報必須 |
鹿児島県某町 |
イノシシ・ヌートリア |
頭数上限なし、GPS報告義務あり |
報奨金は雑所得に区分され、年間20万円を超える場合は確定申告が必要になります。特に副業として位置付けられている場合、源泉徴収の対象となる自治体もあるため、税務処理の誤りは避けなければなりません。
さらに副収入としては、交通支援や装備購入支援制度が設けられている自治体もあります。たとえば、福知山市では「狩猟活動支援金」として年間数万円が支給されるほか、罠の設置にかかる支援や移動に伴う負担軽減も図られています。
以上のように、公務員ハンターとしての副業は法制度と密接に関係しており、以下の3点が重要なポイントになります。
- 副業申請と承認プロセスの遵守
- 報奨金制度の上限・条件の理解
- 税務処理と公務員倫理の両立
とくに自治体内での先例や制度理解が進んでいるかどうかが活動の可否を大きく左右するため、配属前・配属後ともに総務部門や人事担当との協議は不可欠です。
狩猟免許取得と副業運用の現実(制度活用のポイントと注意点)
公務員として猟師活動を行うには、当然ながら「狩猟免許」を取得する必要がありますが、実務レベルでは免許取得以上に重要なのが「その免許をどのように制度運用へ接続するか」という観点です。
狩猟免許には以下の4種類があり、それぞれに対応する活動範囲や取得ハードルが異なります。
狩猟免許の種類 |
対応する道具 |
主な対象動物 |
特徴と取得難易度 |
第一種銃猟免許 |
散弾銃・ライフル |
イノシシ・シカ・クマ |
銃所持許可が必要で半年以上の手続き |
第二種銃猟免許 |
空気銃 |
タヌキ・アライグマ |
銃所持許可不要だが狩猟範囲は限定的 |
わな猟免許 |
くくり罠・箱罠 |
全般(鳥獣) |
比較的取得しやすく地域でも普及 |
網猟免許 |
捕獲網 |
カラスなどの鳥類 |
使用機会は限られるが制度上必要 |
このうち、公務員ハンターに最も多く求められるのは「わな猟免許」と「第一種銃猟免許」です。特に中山間地域では大型獣の罠捕獲が中心となるため、わな猟免許の保有が必須条件とされることが多く、取得率も全国平均で70〜80%と比較的高めです。
ただし、免許を取得しただけでは現場での活動はできません。実際の猟師活動を行うには、以下のステップを踏む必要があります。
- 狩猟免許を取得
- 都道府県に「有害鳥獣駆除従事者」として登録
- 自治体が定める安全講習や現場研修を受講
- 副業として従事する場合は、上長や人事部への届け出と承認
特に銃を使用する場合は、公安委員会による身辺調査・安全講習・技術審査を含む「銃所持許可」が別途必要です。申請から許可までの期間は半年から1年程度かかることがあり、業務との調整が求められます。