なぜ「協会」が存在するのか?行政・民間との連携構造/代表的な協会一覧と活動内容
害獣駆除に関する「協会」とは、有害鳥獣や都市型野生動物による被害に対して、法令に基づいた正確な知識と実践的な技術を広く普及させるために設立された民間団体や公的機関の総称です。行政だけでは対応が困難な現場も多く、地域の実情に応じた柔軟な対応や専門人材の育成、情報の共有が重要とされてきました。そのため、行政機関や自治体、猟友会、民間事業者などと連携し、統合的な対策を進める役割を担う協会の存在が必要とされています。
多くの協会は、害獣駆除に関わる個人や事業者に向けた技能向上の支援や、被害の抑止に向けた啓発活動、防除技術の普及を行っています。特に農林水産省や環境省などの行政機関と連携して、有害鳥獣管理計画の策定や政策提言に携わることもあります。
地方自治体においても協会の果たす役割は大きく、被害が深刻な農村や山間部では、「地域協働型防除モデル」の導入が進んでいます。これは、農業者・自治体・駆除専門家が連携して被害軽減を図る取り組みであり、協会がその中核を担っています。
以下に、代表的な協会とその活動内容を一覧でご紹介します。
協会名
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主な活動内容
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主な対象地域
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日本有害鳥獣駆除防除管理協会
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捕獲技術研修の実施、啓発資料の提供、地方自治体との協定推進など
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全国(支部あり)
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日本ペストコントロール協会
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駆除事業者の登録制度、薬剤の適正使用指導、都市型害獣の対応支援
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都市圏を中心とした地域
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地方自治体協力型有害鳥獣対策協議会
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捕獲者の育成支援、罠設置指導、地域住民向けの防除講習
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中山間地域を中心とした地域
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野生鳥獣対策研究連盟
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被害データの分析、防除モデルの実証、自治体向けの技術支援
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全国(研究機関と連携)
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協会の強みは、地域の特性を理解した現場対応力と、駆除従事者に対する継続的な技術支援にあります。例えばアライグマやハクビシンといった都市部の害獣に対しては、捕獲だけでなく再侵入防止や建築構造の改善といった知識が求められるため、協会が実施する講習や現地での技術指導が大きな意味を持ちます。
さらに、民間のペストコントロール業者と協力し、一般家庭や工場・商業施設の被害防止にも幅広く対応しています。このように、「協会」は単なる管理団体ではなく、害獣被害という社会的課題に対して、知見と信頼を集約する基幹的存在となっているのです。
防除と駆除の違い(協会が推奨する「予防的管理」とは?)
害獣対策においては「防除」と「駆除」という2つの概念があります。一般的には「駆除」がよく知られていますが、近年では「防除=予防的管理」の重要性が協会や行政から強調されています。
駆除とは、すでに発生した被害に対して行う「捕獲」や「排除」など直接的な対処方法のことです。一方、防除とは、被害を未然に防ぐための「環境整備」「侵入経路の遮断」など、長期的・継続的な対策を指します。
以下の表では、それぞれの違いを分かりやすく整理しています。
区分
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主な目的
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主な手段
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適用タイミング
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防除
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被害の未然防止
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侵入口の封鎖、忌避剤の設置、巣の除去など
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被害が出る前の予防的対応
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駆除
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発生した被害への対応
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捕獲罠の設置、毒餌の使用、追い出し措置など
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実際に被害が確認されたとき
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日本有害鳥獣駆除防除管理協会などでは、防除を「継続的かつ計画的に行う管理」として推奨しており、単発的な捕獲よりも再発を防ぐための仕組み作りに力を入れています。都市部や住宅密集地においては、捕獲作業による近隣トラブルや法的リスクもあるため、防除の方が安全かつ効果的とされています。
また、近年の調査では、防除を導入した地域において、3年以内に害獣被害の報告件数が60パーセント以上減少したというデータもあります。特に、以下のような「予防的管理」の実施が高く評価されています。
予防的管理の具体策
- 建物周囲の雑草や樹木を定期的に剪定し、隠れ場所を減らす
- 屋根裏や床下の点検口へ専用ネットを設置し侵入を防ぐ
- 飲食店や工場では、生ごみや食品残渣を適切に管理し、害獣の誘因を防ぐ
- 監視カメラや定点観測により生息状況を継続的にチェックする
このような防除の考え方は、「捕まえること」を目的とした従来の対策から、「地域全体で発生を抑制する」方向へと移行していることを示しています。
協会では、初心者や一般住民を対象とした講習会や冊子の配布を通じて、この考え方を広く浸透させる活動を行っています。害獣対策が専門家だけの取り組みではなく、地域の一人ひとりが関わるべき重要な課題として再認識されつつあるのです。
特にアライグマやイタチのように再侵入や繁殖が早い動物に対しては、単なる捕獲では根本解決が難しく、営巣阻止や侵入口の遮断といった多面的な対応が求められます。これらを包括的に計画・実行できる体制を整備していく上で、協会の持つノウハウや人的ネットワークは、今後ますます重要性を増していくでしょう。